So-net無料ブログ作成

中国山地幻視行~吉和冠・渓流を飛ぶ蝶 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~吉和冠・渓流を飛ぶ蝶

 

 連日35度を超える広島市内を抜けて、別世界にたどり着きたい。その思いで先週は深入山に向かったが、期待は裏切られた。涼を求めていった先が日陰のない稜線歩きであったことが失敗の原因だった。その反省に立ち724日、広島県の北西部、山口県境に近い吉和冠に向かった。この山を選んだ理由は二つ。一つは、沢伝いに歩くので涼しいだろうということ。もう一つは、道がほぼ林間にあるため直射日光を受けにくいこと。

 吉和の里から潮原温泉横のわき道に入るとタイヤ処理工場がある。その先の空き地に車を置く手もあるが、なるべく楽をしたいので最奥の、鉄橋たもとの小広場まで突っ込むのを常としてきた。しかし、今回はためらいがあった。先日の豪雨で、途中の山道は大丈夫だろうか。懸念はあったが、とりあえず車を進めた。

 案の定、未舗装の山道はところどころえぐられていた。車高の高い四駆なのでなんとか最終地点まで行けたが、乗用車タイプだと腹をこすったり、タイヤが空転したりで困難だろう。

 身支度を整え、沢沿いをゆく。予想通り空気はひんやりとしている。音を立てて脇を流れる清流のせいだ。頭上を覆う木々で、直射日光も当たらない。

 しかし、しばらく歩くと計算外のことが起きた。沢沿いを歩くとは谷の底を歩くということでもある。したがって風が全くない。ほかの季節、特に冬場だと風がないのはいいことだが、この季節、無風はつらい。おまけに沢がすぐ横にあるので湿度が高い。温度計を見ると30度あたりを指している。汗が止まらなくなる。これではツァンポー渓谷の角幡唯介【注】ではないか、と下を向きつつつぶやく。

 多量の汗をかいたツケは、頂上直下あたりで回ってきた。あと15分、というところで足が進まなくなった。予定外の休憩をとる。ここまでで水1㍑がほぼなくなった。熱中症が怖いので、水の摂取だけは怠らないようにした。

 山頂の展望台からは、いつも見える恐羅漢山も十方山も白くかすんでいた。あまりの熱気のせいだろうか。こんな光景は見たことがなかった。

 

 下山は来た道を下った。やはり沢沿いの道である。目の端に黒いものが飛んでいた。目を凝らすと渓流に黒い蝶が数羽。水を飲んでいるようだった。蝶が水を飲む? 鉄橋を渡ると、それはもっと確かな光景となって目前に広がった。数羽の黒い蝶が湿地に固まって佇んでいた。帰宅して調べたところ、カラスアゲハかミヤマカラスアゲハらしい。この蝶はオスだけが吸水行動をとるらしく、実態はよくわかっていないという。夕暮れ迫る山間の渓流で偶然見た不思議な光景であった。

 

【注】「空白の五マイル」で角幡が命がけで踏破した地域。高温多湿と虫の襲来に悩まされる。吉和冠は、蜂はいたがほかに害虫らしきものは見かけなかった。

 

DSC01913のコピー.jpg
この山は広葉樹の緑が深い。いい道である。が…

DSC01904のコピー.jpg
山頂には誰もいなかった

DSC01888のコピー.jpg
ヤマジノホトトギス

DSC01916のコピー.jpg
フシグロセンノウ

DSC01919のコピー.jpg
分かりにくいが、中央の石の左端に黒い蝶

DSC01921のコピー.jpg
湿地にたむろする黒い蝶
 

nice!(5)  コメント(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。