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雪の北八ケ岳<下>~4月5日 [八ヶ岳幻視行]

雪の北八ケ岳<下>~4月5日

 「あの大きな山はなんだろう」

 「ええと、北東の方角だから浅間山かな」

 「そうだそうだ、あれは浅間山だ」

 早朝、ヒュッテから北横岳の頂をめざした。といってもわずか20分で着く。息を切らして登り切り、振り向くと赤岳を筆頭に横岳、阿弥陀山が正面に見える。気温がやや高いせいか、遠方がやや霞んでいるのが残念だ。

 そこからわずかに右に首を振ると南アのとがった頂。その右には中央アルプスだろう。その右に北アのキレットが見える。霞んでいなければ穂高も槍もよく分かるはずだが、きょうはおぼろげなままだ。北アと中央アルプスの真ん中にポツンとあるのは白山だろう。そして浅間山。

 正面には蓼科の特徴的な山容がある。雪をかぶっているが、急激な気温の上昇とともに雪解けが進んでいるのではないか。山頂付近には山小屋さえ確認できる。蓼科の右手に目を落とすと、双子池へと向かう縦走路がよく分かった。

 
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浅間山。雄大な姿だ

 
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中央に南八ツの主峰赤岳

 
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蓼科の左に、北アの稜線がかすかに見える


雪の北八ケ岳<中>~4月4日 [八ヶ岳幻視行]

雪の北八ケ岳<中>~4月4日


 小部屋の引き戸を開けると、ガラス窓越しに薄明の空が広がっていた。その空は、みるみる茜色に染まっていった。雲はほとんどない。

 あたりは新雪で埋まっていた。北横岳ヒュッテを出て、きょうは溶岩台地を横切り、縞枯山まで行ってみよう。

 林間を抜けて下りに差しかかる頃、昔見た風景が目に飛び込んできた。縞枯のなだらかな稜線越しに顔をのぞかせるのは南八ツの急峻な山々。その左に南アルプスが望める。ちょうど真北の方向から、南アを見ている。三角のとがったのは北岳とすぐわかったが、右の鋭角の山が分からない。地図で確認したところ、甲斐駒らしい。すると、その右に長い稜線を引いて立つのは千丈岳か。

 縞枯山の急登を登り切ったころ、赤岳が目の前に迫ってきた。やっぱりいいな、赤岳は。特に雪をかぶった赤岳は。

 
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北横岳ヒュッテから見たご来光 

 
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溶岩台地の向こうに南八ツと南アの山々

 
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左は北岳、右は甲斐駒であろう


雪の北八ケ岳<上>~4月3日 [八ヶ岳幻視行]

雪の北八ケ岳<上>~4月3日

 

 風が吹くたび、ロープウエーが揺れる。「スピードを少し落とします」と、係員が背後で言う。おそらく、この便がきょう最後だろう。山頂駅に着いたころ、あたりは雪が舞っていた。ルートは除雪してあったが、逆にそこに新雪が吹きだまる。5060㌢はありそうだ。足が前に進まない。

 雪をかぶった林を仰ぎ、ようやくたどり着いた北横岳ヒュッテの小さな灯りが妙に懐かしかった。

 
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覆いかぶさる斜面が、孤独感を掻き立てる 

 
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北横岳ヒュッテの小さな灯りが、暖かい匂いを放つ


八ヶ岳幻視行~赤岳再訪 [八ヶ岳幻視行]

八ヶ岳幻視行~赤岳再訪

 「南八ヶ岳を動的な山だとすれば、北八ヶ岳は静的な山である。前者を情熱的な山だといえば、後者は瞑想的な山だといえよう」
 「北八ッ彷徨」で山口耀久はこのように書いている。北八ッの静かな縦走路も捨てがたいが、われわれのような俗人にはやはり、荒々しい南八ッの山容は魅力的である。いいかえれば南八ッは、フォトジェニックな山でもある。中でも赤岳はひとり、他を寄せ付けない厳しさを漂わせてたたずむ。この孤立感が人を引き付ける。
 赤岳に登ったのは2008年夏だった。それから2年、この山を再訪した。赤岳鉱泉から硫黄岳を越え、横岳を縦走して赤岳頂上へ。同じルートをたどった。前回はほぼ全日程、ガスに包まれたためである。どうしてももう一度訪れて、この山の眺望を確かめたかったのである。
 願いが通じたか、今回の山行はほぼ天候に恵まれた。秋空のしたに続く蓼科からの縦走路はもちろん、北アルプスの槍・穂高連峰と大キレット、中央アルプス、南アルプス、そして富士山をも眺めることができた。それにしても横岳から赤岳への岩稜、山口耀久のいうとおり「情熱的」である。
 9月18日から20日までの3連休。当然のことながら山小屋はどこも満員だった。路傍の花は、期待しなかったがやはりめぼしいものはなかった。トリカブトの群生、ゴゼンタチバナの赤い実が目を楽しませてくれたぐらいだ。下山路で見たナナカマドの葉は猛暑のためか痛めつけられていた。今年の紅葉は期待薄なのだろうか。
 
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赤岳鉱泉からの樹林帯を辛抱すると、開放的な稜線に飛び出す。右上が硫黄岳頂上

 
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 硫黄岳頂上から蓼科㊧、天狗岳(中央)を望む

 
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硫黄岳頂上から横岳㊧と赤岳を望む 

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 硫黄岳から横岳へ向かう広い稜線

 
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横岳への登り。大同心が空に突き出す 

 
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 硫黄岳から横岳への道。登山者が列をなす

 
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横岳から赤岳を望む 

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蓼科㊧から続く八ヶ岳縦走路の全貌。右下は赤岳天望荘(赤岳頂上小屋前から) 

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 赤岳山頂。空はすっかり秋だ

 
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中空に槍・穂高連峰が浮かぶ 

 
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朝の富士山 

 
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中央アルプスの山なみ 

 
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 南アルプスの山なみ

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文三郎尾根上部から赤岳頂上をあおぐ 

 
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ナナカマドは赤い実をつけていた 

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赤岳頂上付近で。アカモノかコケモモの実らしい。葉の形からするとコケモモか 
 
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トリカブトの花はあちこちにあった 

 
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 ゴゼンタチバナの赤い実

 
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 ホタルブクロ


八ヶ岳幻視行~赤岳山頂で富士を見た [八ヶ岳幻視行]

 八ヶ岳幻視行~赤岳山頂で富士を見た

 2008年の夏は松葉杖で過ごした。1カ月後には穂高に登るという動かせない日程が組まれていた。恐る恐る医者に聞いてみた。「行くのは勝手ですが、痛くて歩けないと思うよ」。でも結局、サポーターを足首に巻いて、行ってしまった。無事、奥穂高への4度目の「巡礼」を果たした。松葉杖の原因は、直前に行った赤岳だった。下りのなんでもない山道で、左足首をひどく捻挫してしまったのだ。以下は、その時の記録である。

 

 赤岳・横岳・阿弥陀岳

 大きな忘れ物をとりに、八ヶ岳に向かった。昨年秋、硫黄岳から見た赤岳と横岳、阿弥陀岳の絶景。ぜひ登りたかったのだ。
 8月13日早朝、新幹線で広島を発った。見覚えのある茅野駅でバスに乗り換え美濃戸口に着くと風はひんやりしていた。標高1,500㍍。3時間の歩きで赤岳鉱泉。車も行きかう林道はやがて沢沿いの山道に。午後4時すぎ標高2,200㍍の小屋に着いた。温泉でさっぱりと汗を流す。
 14日午前7時前、硫黄岳へと向かう。気温14度。樹林帯をジグザグに登る。快適。しかし山上はガスに覆われていた。
 緩い登りをしばらく我慢すると砂地の広場に飛び出した。赤岩の頭だ。ぽつんと標識。ガスの向こうに岩塔のシルエット。その下を横切ると、昨年見ただだっ広いガレ場が広がった。硫黄岳、標高2,760㍍。赤岳鉱泉から1時間半足らず。風が強く視界はきかない。昨年と同じだ。唯一違うのは、一瞬もガスが切れることのないことだった。
 硫黄岳小屋へ向かい、そのまま横岳の登りにかかる。一面にコマクサ。時期を過ぎたためか花びらは枯れかけ強風に揺れている。しばらくだらだらと登る。だが尾根の右側はすっぱりと切れ落ち、ガスが漂う。爆裂火口の縁を歩いている状態だろう。視界がきかないため高度感はない。
 やがて鎖場。はしごもある。しばらく歩き横岳頂上へ。2,829㍍。ピラミッド状の山ではない。ノコギリの歯の、一番高度がある場所が山頂という感じだ。居合わせた登山客にカメラを渡し記念撮影。10時を少し回っていた。さらに岩稜帯を行くと小さな地蔵の建つ分岐。下りは地蔵尾根。行者小屋から登るとここに合流する。5分で赤岳展望小屋。風裏に回ると数人が休んでいた。いずれも昼食の最中。そういえば、と時計を見ると11時すぎ。しかし、これからきつい登りがある。昼食は頂上小屋にしよう。
 ジグザグの道は、そのうち岩がむき出しの登り一辺倒になる。脇の鎖をつかむ。息が上がる。30分ほどで小屋が見え始める。正午すぎ、頂上だ。2,899㍍。天候は悪くなってきた。夜半は風の音がすごく、たびたび目が覚めた。

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 赤岳山頂から見た頂上小屋

 

 15日、最悪の天気。何も見えない。それでも、とザックを担ぎ頂上に向かう。小屋から5分。カメラも役に立たない、と思ったとたんガスが切れた。尾根の向こうに雲海。富士のきれいなシルエットが浮かぶ。
 山頂下のはしごに取り付いたのは午前6時半。実は迷っていた。権現岳、編笠山へ直接向かうか。阿弥陀岳を往復して権現へ向かうか。阿弥陀から行者小屋へ降り、美濃戸へ向かうか。行者小屋に降りれば日程は一日短くなる。阿弥陀往復、権現へは正味7時間以上の行程。「天気しだい」と決めてはしごを降りた。

 ここで痛恨のミス。踏み跡につられ、T字型の三叉路をそのまま下降してしまった。傾斜はきつくなり、コースは消えていく。「違う」と気づき登り返したが50分のロス。この時点で7時間コースはあきらめた。

 
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 赤岳の稜線越しに見た富士山

 稜線は気持ちのいい下りだった。途中で行者小屋へのルートを確かめ、阿弥陀の登りに取り付いた。思ったよりきつい。岩をよじ登る。しかし、30分ほどの我慢。8時40分、頂上だ。2,805㍍。
 阿弥陀岳下の分岐から行者小屋へと緩やかに下る。登りの登山客に道を譲り一歩を踏み出したときだった。足元の石が泥状の地面の上を滑った。気がついたら左足首が体の下にある。しびれている。「しまった」。幸い骨は折れてはいないようだ。痛みはあるが、バスが来るところまで歩くしかない。3時間かけて山道を下った。
 美濃戸口でバスを待つ間、ジョッキの生ビールを注文した。通りかかった団体がうらやましそうに見ているのを横目に、テラスのテーブルで飲み干した。

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