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中国山地幻視行~思わぬ雪・大峰山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~思わぬ雪・大峰山

 

 12月9日、大峰山。登山口に近づくにつれて、舞う雪が濃くなった。路面も白くなり始めている。確かに、東日本から北海道にかけて寒波が襲ってはいるが、西中国山地まで雪化粧になろうとは、予想していなかった。したがって、雪に備えた装備もしていなかった。引き返そうか…弱気の虫が頭をもたげた。

 登山口に着いたとたん、日が差した。まるで山が「おいで、おいで」といっているようだ。とりあえず、薄手のフリースの上にレインウエアを防寒用に着て、山道に足を踏み入れた。こんな日に山に入ろうという酔狂は珍しいらしく、登るにつれ雪が深まる山道に足跡はなかった。午前の日差しがまっさらな雪面を照らしだした。見とれていると、後ろから夫婦連れらしい二人が追い付いてきた。さらに若い男性が軽快に追い抜いていった。結局、この日出会ったのはこの三人だけだった。

 山頂は、降る雪のせいか眺望はなかった。広島湾が日差しを受けて鈍く光るのが、わずかに確認できた。

 登りよりも下りが大変だった。この山は結構な急登だが、その道が雪と泥濘で覆われている。腰を引き引き下ったが5、6回は足をとられた。おかげでズボンは泥だらけ。しかし、久々の山行である。気がつくと鼻歌を歌いながら斜面を下っていた。

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登山口近くにあった南天の実。雪をかぶって寒そうだった

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まっさらな雪面を朝日が照らす

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山頂から広島市方面を望む

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鈍く光る広島湾。広島・山口県境付近

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雪でかすんだ山口方面を望む

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中国山地幻視行~宮島・弥山は国際色豊か [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~宮島・弥山は国際色豊か

 

 紅葉谷公園から登山道に取り付き、日当たりの悪い石段を登るとロープウェイの終着点から山頂へと延びる舗装された明るい道に合流する。ここまで来ると、ハイヒールやミニスカートの女性もいる。横を歩いていた若い女性のグループが何やら笑いながら話している。「○×▼◆□…」。日本語ではない。外見は日本人そのものなのだが。

 山頂に着いて周りを見渡すと、外国人が多い。欧米人、アジア系、ヒスパニック系…。日本人の方が少ないぐらいだ。その日本人に見えた人たちも、会話を聞いていると日本人でないことが分かる。中国系、台湾系、韓国系…。近年、ますます国際色が豊かになってきたようだ。これもworld Heritageの威力だろうか。

 1月21日、船で宮島に渡り、紅葉を楽しんだ後、弥山(535㍍)に登った。下山は大聖院コースをとった。晩秋の日差しに、紅葉が最後の輝きを放っていた。

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大聖院そばの紅葉

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大聖院入り口付近の大イチョウ

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千畳閣と五重塔の下にある大イチョウ。千畳閣は秀吉が建立したとされる

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下山途中の展望台から

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弥山の山頂

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弥山の展望台にある地図。紅葉谷ルート(右側の緑色)を登り、大聖院ルート(中央のオレンジ色)を下った

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中国山地幻視行~美は乱調にあり・佛通寺の紅葉 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~美は乱調にあり・佛通寺の紅葉

 

 1115日、三原の佛通寺を訪れた。

 見たところ、紅葉はピーク過ぎて枯れ始めと思った。その印象を若い僧侶にぶつけてみた。僧は、私の言葉を肯定しなかった。「紅葉は木によって時期が違います。よく見ればまだ緑のものもあります。既に盛りを過ぎているというのは、適当ではありません」。こんな答えだった。そうか、紅葉は桜とは違うのだ。桜は一斉に咲き、一斉に散る。そこに美学を感じる人もいる。しかし、紅葉はそうはならない。それぞれの木が葉を紅く染め、それぞれに枯れ、散っていく。そこに美学がある。乱調の美学である。

 平日というのに、寺の周辺は人であふれていた。紅葉の見ごろということだろう。しかし、「見ごろ」とは何だろう。ヒト社会の時の流れと自然界の時の流れ。先の僧の投げかけた言葉によって、考えなくてもいいことを考えてしまった。


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タグ:紅葉 佛通寺
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中国山地幻視行~牛曳山から毛無山へ [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~牛曳山から毛無山へ

 

 心がざわつく景色がある。晩秋の山。紅葉は既に盛りを過ぎ、冬の到来を待つ白樺の林。日の影が長く伸びて、枯葉降り積む山道。何が心を揺らすのだろう。

 11月6日、比婆山連山の一角、牛曳から毛無を歩いた。1024日、この地を訪れた時には「紅葉にはまだ早い」とアドバイスを受けたコースである。ちょうど2週間が過ぎた。早くはなかった。というより、もう遅かった。白樺の紅葉はすでに終わり、ブナの黄葉がわずかに秋を物語っていた。

 それでも、歩くたびかすかな音を立てる枯葉の道は、人のぬくもりを宿しているようで心地よかった。牛曳の頂まで2.5㌔、1時間強でたどり着くと、あとは縦走路である。伊良谷山までは起伏が少なく、30分ほどで着ける。そこから、やや深い谷を駆け下りて登り返す。1時間足らずで毛無の山頂に立てる。

 同行者が指さす方向に、巨大な山塊が見えた。大山である。思ったより近い。先日「初冠雪」のニュースが流れたが、もう雪は消えたようだ。白く見えるのは、砂走であろう。

 毛無山頂で昼食を終えると、六ノ原までの下りルートを通った。出雲峠への分岐を過ぎると、紅葉が再び色を濃くした。午後の日差しが、去りゆく秋を演出した。

 

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落葉を踏んで山に入る

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白樺はすでに落葉していた

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もみじが逆光に映える

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つづら折りの道を行く

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紅葉。風雅なたたずまいである

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山道の横には、枯れそうで枯れない小さな滝がある

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牛曳の山頂は近い

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伊良谷山頂から、大山が意外に間近に見えた

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毛無から縦走路を振り返る

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毛無山頂。見上げれば秋の雲

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出雲峠への分岐を過ぎると、紅葉が濃くなった

 

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中国山地幻視行~不思議な山名と錦繍をまとって・鯛ノ巣山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~不思議な山名と錦繍をまとって・鯛ノ巣山

 

 秋晴れの1031日、「鯛ノ巣山」という不思議な名前の山に登った。広島県に近い島根県にある。1026㍍。紅葉が楽しめるのでは、と思ってのことだ。

 山名の由来について、確たる説はないようだ。ふもとの奥出雲は陰陽の物資の集積・中継地点に当たり、日本海側の魚が集まってくる―即ち「鯛の集(す)」の地域ということから、という説が有力なようだが、定説ではない。

 ほぼ独立峰で登山口は標高450㍍。頂上までの標高差は600㍍弱で、結構な急登である。登るにつれ深さを増す紅葉と黄葉が唯一の励みである。途中の眺望はあまりない。それでも9合目あたりから水平な尾根道に変わり、黄葉の「ゴールデンゲート」が続くと、心も浮き立つというものだ。

 頂上付近は、おそらく地元の人の奮闘の結果であろう、雑木がきれいに刈り込んであった。眼下に奥出雲の山里が広がる。その向こうに、海と半島。宍道湖と中海であろう。右へ、つまりは東へ目を転じると大きな山塊がうっすらと見える。大山である。翌日知ったことだが、この日の大山は初冠雪だったという。

 頂上から南方向へ300㍍移動すると「弁当大岩」というこれまた不思議な絶壁がある。おそらく、景色がいいので昔はここで飯を食った、という意味であろうか。これも、山名同様、心もとない推理である。しかし、名前の由来はともかく、正真正銘の絶景であった。向かいには広島県側と思われる山(猿政山であろうか)が屹立し、足下の谷間を道路が縫っている。国道432号と思われる。そしてこの山、鯛ノ巣山のきらびやかな錦繍の衣が谷へ向かってなだれ込んでいた。

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あと少し、急登が続く

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山頂への尾根道はゴールデンゲートが続く

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大山の山塊が浮かび上がる。山頂から

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眼下に広がる奥出雲の山里。山頂から

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広島県側の山並み。「弁当大岩」から

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日差しに映える紅葉。「弁当大岩」から

 


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中国山地幻視行~偶然の出会い・比婆連山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~偶然の出会い・比婆連山

 

 池の段まで、あと30分か。そう思いながら、登りの山道を詰めていた。数人が下ってくる気配がした。「asaちゃん?」と声がする。そんな呼び方をされたのは、久しぶりだ。驚いて顔を上げると、懐かしい顔があった。写真部にいたKさんである。数人を連れていた。Kさんは退職後、写真塾を開いている。そこの塾生さんたちだった。紅葉の比婆連山を撮りに来たらしい。二、三の言葉を交わし別れた。もっと話をしたかったが、塾生さんたちの手前、遠慮した。Kさんは塾の写真展を定期的に開いている。案内状をもらっていたが、忙しさにかまけてつい行かずにいた。今度、ぜひいってみよう。

 Kさんとの出会いは全く偶然だった。六ノ原に車を置き、毎年のように県民の森公園センターに紅葉の進み具合を聞いた。腹づもりとしては、途中に白樺林がある牛曳山~毛無山があった。今年は全般に紅葉が早いといわれており、ちょうど見ごろでは、と思ったのだ。ところが「全然、早くないですよ」という。それならと、比婆山~池の段にコースを変えた。池の段あたりが見ごろという。こんなやり取りと、コース変更がなければKさんと出会うことはなかっただろう。

 池の段と立烏帽子のホツツジは紅葉の真っ盛りだった。残念だったのは終始重苦しい雲が垂れ込め、太陽が顔を見せなかったことだ。天候さえよければもっと鮮やかな赤が楽しめたに違いない。


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烏帽子山から紅葉の比婆山を望む

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天然ブナの林間を行く。台風のためであろう、落葉が多かった

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紅葉のホツツジと立烏帽子山

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ホツツジと比婆山

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錦繍をまとった池の段


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中国山地幻視行~世の中いろいろ・三倉岳 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~世の中いろいろ・三倉岳

 

 暑いなあ…そう思って足元に目をやったとたん、ぽたりと汗が滴った。

 10月も中旬に入ろうかというのに、気温は30度近くあるだろう。風はない。

 体育の日の9日、三倉岳に登った。昨年の体育の日も三倉岳だった。なぜか、体育の日はこの山と連想が働くらしい。そして、昨年も人が多かったが、今年はさらに輪をかけて登る人が多かった。

 中岳の頂は8畳敷きほどの細長い形状の大岩だが、そこもいっぱいだった。おちおち、座って休むこともできないほどで、みんな立って周りの景色を楽しんでいた。

 西岳で昼食を済ませ、下りの5合目にある大岩から山頂を見返した。岩の下で、下ってきた男女二人連れに声をかけると女性が大岩に登り、男性がその姿をカメラに収めた。続いて降りてきた男女は男性が登り、女性がカメラに収めた。世の中いろいろだ。

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中岳の大岩は満員だった

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西岳の大岩から

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麓の田は実りの秋

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西岳山頂付近。紅葉はまだ早いようだ

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5合目の大岩のてっぺんから山頂を振り返る

 


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中国山地幻視行~窓が山・キレットを渡る [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~窓が山・キレットを渡る

 

 久しぶりにキレットを渡った。といっても、槍穂のそれとは比ぶべくもない。しかし、キレットはキレットである。

 9月30日、窓が山。この山名の由来にはいろんな説がある。山頂に巨大なキレットがあり、それゆえに「窓」と名付けたというのもその一つである。巨大なキレットがあるとは、山頂が二つあるということでもある。この日はまず西峰、そしてキレットを渡って東峰に着いた。二つのピークの間は巨岩あり、鎖ありで結構変化に富んでいる。

 最初の西峰には、ピークに大きな岩がある。その上には雲一つない秋の空、眼下には逆光をちりばめた市街地、その向こうに広島湾と島々があった。最近になく澄んだ遠望であった。しかし、四国山地が確認できるほどの清澄さは、この日はなかった。

 東峰に着いたのは、午前11時を少し回ったころであった。だれもいなかった。快晴の日の週末としては、意外であった。そのうち、男性が一人。すぐに下りていった。続いて母子3人連れ。ひとしきり景色を楽しんだ後、昼食の準備にかかった。つられてこちらもザックを開いた。

 ひと時の休憩を終えて、さあ帰途につくか、と思ったころ、数人のグループ。眼下の光景を見ながらひとしきり語り合っていた。秋の日は釣瓶落としという。背中を押されるように下りにかかった。

 

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窓が山西峰の山頂。この岩の上に立てば、広島湾が眼下に広がる

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西峰からの眺望。四国は見えなかった

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キレットに立つ巨岩。モアイ像のような風貌

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山はこんな形をしている

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中国山地幻視行~双耳峰を楽しむ・恐羅漢山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~双耳峰を楽しむ・恐羅漢山

 

 旧羅漢山からの復路を登り返した先には、青い空が広がっていた。山頂の広場には最近新調したらしい標識がたち、周囲には10人ほどのグループがいた。リーダーらしき人がひとしきり話をすると、そのまま下りていった。続いて、若い男女3人ずつのグループ。楽しそうに昼の宴を始めた。

 924日、広島県の最高峰・恐羅漢山(1346㍍)に登った。天気のよさにつられ、そのまま旧羅漢へと向かった。この山はなだらかな山容の双耳峰である。旧羅漢は恐羅漢より12㍍低い。たったそれだけの標高差のゆえに旧羅漢は訪れる人も少なく、無聊をかこっている。そのためか、森は深く山道はぬかるみ、山頂付近の眺望もきかない。往復しても1時間足らずなのだが。

 こうして往復した後が、冒頭の光景である。天気は良かったが、先日の大峰山と同じく霞がかかって遠望がきかない。空の青さと秋の雲の流れだけが際立っていた。

 降り際に、旧羅漢への道筋で出会った男性に聞いてみた。旧羅漢で眺望のきく場所は。ありますよ、と返事があった。山頂から5分ぐらいですかね、という。そして、周囲には大山蓮華が咲くという。聞いてみるものだ。今度は6月に訪れてみよう。


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恐羅漢山頂の上に広がる秋の空

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旧羅漢への道はうっそうとしていた

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旧羅漢の山頂。恐羅漢より12㍍低い

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秋丁字。木の陰に咲いていた。シソ科である

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西中国山地の山々はかすんでいた

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中国山地幻視行~曼珠沙華を見に・大峰山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~曼珠沙華を見に・大峰山

 

 一陣の秋の風が吹くと、赤い花が脳裏に浮かぶ。曼珠沙華である。路傍を赤く染める花。撮るのはなかなかむつかしい。

 9月21日、曼珠沙華を見に大峰山(1050㍍)に向かった。咲くのは登山路ではなく、ふもとの田園地帯である。果たして、曼珠沙華は咲いていた。黄色く色づいた田のあぜ道に赤いラインを引くかのように。しかし、早めだったのか、染めるというにはおぼつかない。毎年白い曼珠沙華が咲くあたりにも目を凝らしたが、見つけられなかった。早かったのか、それとも今年は咲かなかったのか。

 息を切らして山頂の大岩をよじ登ると、地元の男性らしい二人が談笑していた。声をかけると、一人が「今日はいい天気でしょう、こんな天気は滅多にない」と笑った。「もっと空気が澄んでいれば、四国まで見えるのにね」という。広島湾の方角に目をやると、たしかに湾内の島々は見えるが、その向こうはかすんでいた。天気が良すぎて気温が高いせいか。

 しかし、西方や北方に目をやると、めぼしい山がそれぞれ確認できた。比較的よく行く三倉岳、特徴ある山容の吉和冠…。360度の展望を楽しんだ後、周り縁にも寄った。路傍のササが腰まで伸びていた。この往復路は、途中で崖の縁を歩くところもある。刈ってあった方が事故は起きないだろう、と勝手に念じる。

 周り縁から八畳岩に向かい、振り返った山頂の上には、まぎれもない秋の空が広がっていた。

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曼珠沙華。彼岸花ともいう

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天空の目のような景観が楽しめる

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広島湾に浮かぶ島々

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裏から見た三倉岳

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表から見るとこんな感じ(6月9日撮影)

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山頂の大岩の上に広がる秋の空

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中国山地幻視行~ガスの中の大山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~ガスの中の大山

 

 2014年4月以来だから、ほぼ3年半ぶりである。9月13日、3日間の晴れマークを確認して、鳥取の大山へ向かった。大山寺近くのキャンプ場駐車場に車を止め仮眠。翌朝、日の出とともに起きだし、真っ先に頂上付近に目をやった。朝日が北壁の上部を照らし、ガスはかかっていない。

 まずはコーヒーを一杯。身支度にかかった。思えばここ数年、山に行く機会がめっきり減った。体力はどれほど残っているだろうか。大山は、それを測るバロメータでもある。

 5合目を過ぎたころ、ブナ林が切れて北壁が姿を現した。朝日が当たって、陰影が見事だ。しかし、ふもとからはガス。みるみる山頂へと駆け上る。あれが頂上を巻く前に着きたいものだ、と気は焦るが足が前に出ない。亀の歩みだ。この3年半の間に、つるべ落としのように体力は削がれていた。その現実に愕然とする。

 8合目を過ぎ木道にかかるころ、あたりはすっかりガスの中だった。最後の登りを登り切り、頂上の石碑付近に腰を下ろす。この山の実質の頂上である剣ヶ峰も、島根半島の弓ヶ浜も、まるで見えやしない。天空には青い空があるが、この付近にだけ白いガスが流れている。

 それでもしばらく待った。人は多かったが、三々五々、木道を伝って下り始める。こちらも長居はできない。下り始めたころ、やっとガスの切れ目から弓ヶ浜が望めた。全くこの山はベールが好きだ。山頂から日本海が望めるのは3回に1回というところか。



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山頂付近に朝日が当たっていい感じだったが…

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北壁をガスが這い上ってきた

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頂上小屋はガスの中

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剣ヶ峰への縦走路には、分かりやすい看板が立っていた

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弥山にある「大山頂上」の碑。毎年ここで山開きの神事があるので山頂と認知されているが、実際は剣ヶ峰がここより約20㍍高い

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下り始めたころ、ガスの切れ目に弓ヶ浜

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登山口から頂上まで標高差900㍍、3㌔を登る。急登である

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フウロはあちこちに咲いていた

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思いがけず、トリカブトも

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ミヤマコゴメグサ


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中国山地幻視行~晴れた日には日本海が見える・岩樋山/道後山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~晴れた日には日本海が見える・岩樋山/道後山

 

 広島県の東北の県境にあるこの二つの山は、なだらかな草原で結ばれている。その中を歩くと、さながら雲上のプロムナードである。標高でいうと、実は岩樋山(1271㍍)の方が道後山より2㍍高い。しかしなぜか、一般には道後山のほうが知られていて、岩樋山は前衛峰の扱いをされることが多い。山容といい眺望といい、二つの山はどちらも引けを取らない。岩樋山は不当な扱いを受けていると、つくづく思う。

 9月4日、中国自動車道を庄原インターで下り、1時間足らずで岩樋山直下の駐車場に着いた。ここで既に標高1000㍍を超している。登山口へ向かう途中、目の端に薄紫の集団が飛び込んだ。マツムシソウの群生である。数日前、深入山であれほど探して見つからなかった花が、今を盛りと咲き誇っていた。とっくに終わったと思っていた花が、ここではそうではなかった。

 それからの山道は、マツムシソウに覆われていた。もう一つ、競演する花があった。イヨフウロである。小さな花が咲き乱れていた。ところどころ白い斑点のように存在感を示すのは、ホソバノヤマハハコグサであろう。

 直下の急登を登り切ると、岩樋山のなだらかな山頂に立てる。東には道後山が望める。北東へ目を転じると、ひときわ大きな山塊。大山である。さらに北には、はるかなきらめき。日本海であろう。

 ここからはもう、急登はない。なだらかな草原を歩く。左手には常に大山がある。

 道後山山頂で一人のハイカーに出会った。すぐ下に「大池」という湿地帯に囲まれた池があり、サワギキョウが咲いているという。昼食もそこそこにして向かった。山道を外れ湿地帯に足を踏み入れると、確かにサワギキョウの群落があった。キキョウというには少し変わった、細長い花弁。紫の色だけが、キキョウを思わせる。

 二つの山を巻いて、駐車場へと戻った。午前には雲があった空は、さわやかに晴れ上がっていた。

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岩樋山の山頂から。大山の山塊が目を引く

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北には日本海のきらめき

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道後山へと続く雲上の散歩道

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道後山の山頂から大山を望む

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道後山直下にある「大池」
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マツムシソウ
 
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イヨフウロ

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ホソバノヤマハハコグサ

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ウツボグサ

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サワギキョウ

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ムラサキツメクサ

 

 


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中国山地幻視行~深入山・山頂には秋の風 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~深入山・山頂には秋の風

 

 急登を終え一息ついたころ、風がほおをなでた。首筋に照り付ける日差しは夏のままだが、風は秋のそれだった。夏の午後のアスファルトを踏んで我が家にたどり着き、エアコンの涼風にほっとする。そんな感じだった。見上げるとなだらかな稜線の向こうに青い空が広がった。雲はなかった。

 8月30日、深入山。この山は先月も訪れた。その時に見損なったマツムシソウが目当てだった。しかし、薄紫の花はほとんど見ることができなかった。わずかに数輪、夏の残骸のようにひっそりと日陰に咲いていた。おそらく開花期は過ぎたのだろう。キキョウもまた、思ったほどではなかった。

 それでも山頂を吹きわたる風と、はるかな稜線と青い空がこの日の収穫だった。

 

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急斜面を越えて一息つくころ、青い空が広がった

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山頂に秋の風が吹きわたる

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枯れ木がオブジェのように

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ススキの季節だ

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下山して仰ぎ見ると、飛行機雲が一筋

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ミヤマママコナ

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ツリガネニンジン

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キキョウ

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ゲンノショウコ

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マツムシソウ

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オミナエシ

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アザミ



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中国山地幻視行~ちぐはぐな一日・白木山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~ちぐはぐな一日・白木山

 

 南ア・鳳凰小屋で関東から来たという女性と話していて、広島で訓練登山の山として知られるのはどこですか、と聞かれた。話しぶりから広島に住んでいたことがあり、若干の土地勘があるようだった。そこで「白木山(889㍍)」を上げた。広島市北方の近郊(安佐北区)にあり、登山口から山頂までの標高差は800㍍。鳥取の大山(大山寺から標高差900㍍)に引けを取らぬ数字であり、近くの高校や大学の登山部、ワンゲル部もトレーニングに使っている。北アや南アを目指す人の中には、一日2、3回登るつわものもいるようだ―。おおむねこんな話をした。

 そんなわけもあって、白木山に登った。

 早朝、車で向かう途中、忘れ物に気が付いた。カメラである。このブログを書き始めて初めてのことだ。引き返すか。しかし、既に登山口近くまで来ている。結局、カメラなしで登った。このブログに限り、掲載した写真はスマホで撮ったものである。

 平地は晴天だったが、近づくと白木の山塊はガスで覆われていた。よからぬ予感がした。そのとおり、登山路を歩き始めると湿度の高さに皮膚が耐えかね、汗が噴き出した。湿度計がなく計測のしようがなかったが、かなりの高さと思われた。しかし日差しは強く、林間の道を、影を求めて歩いた。

 山頂に着いたころ、雲行きが怪しくなった。見上げると黒い雲が走っていた。握り飯をほおばっていると、小さな雨粒が落ちてきた。この程度ならと、そのまま打たれた。ところが雨粒は急に大きくなり、あっという間にわが身とザックをずぶぬれにした。近くの避難小屋に逃げ込むべく、いったん広げた小道具を大急ぎでザックに詰めたとたん雨はやみ、日差しがかっとあたりを照らした。

 カメラの忘れ物に端を発して、ちぐはぐな一日であった。こんな日はせめて無事故であったことを僥倖(藤井聡太四段が使っていた)と思うことにしよう。

 

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大粒の雨の後、再び夏の日差し。右の構築物は山頂の展望台

 


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中国山地幻視行~深入山のショウブ [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~深入山のショウブ

 

 山を下り、休憩所でアイスクリームをなめていると「山野草の季節になりましたね」と、店番の女性から声をかけられた。「この山は種類が多いですからね」と答えた。

 名も知れぬ小さな花を見に、暑いさなか深入山(1153㍍)に来た。そんな楽しみでもなければ、木陰などない山道を歩く気にはならない。

 緑は濃かった。巨木に「南登山道」と刻まれた標識のそばに「熊出没注意 危険」の看板。気温32度。ウツボグサが足元に咲いていた。房状の白い花はオカトラノオであろう。山道の両側にはキキョウも咲くはずだが、早かったようだ。高度を上げると、ササユリとナデシコが目立ち始めた。8合目あたりから頂上にかけてマツムシソウが見られるはずだが、さすがにこれも早かった。あと1カ月待って、もう一度来てみようか。

 山頂で飯を食っていると、紫の濃い花が目についた。花弁の中央に黄色の筋。ノハナショウブであろう。先に書いたように、この山には日陰がなく、湿地もない。アヤメ科の花は池のほとりなどに咲く印象がある。こんなところで見るとは、意外だった。草原を探すと、数輪がかたまって咲いていた。

 暑さのため、そこそこに山を下りた。林道を迂回するルートを取った。途中のあずまやのあたり、路傍にキキョウを見つけた。キキョウは結局、この一輪だけだった。

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控えめに「熊注意」の看板。それにしても立派な「登山口」の標識

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むせかえるような緑

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山頂が見えてきた

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はるか下にあずまや。下山路はあの小屋を経由した

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山頂についたころ、雲行きがあやしくなった

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ウツボグサ

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オカトラノオ

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ササユリ

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ナデシコ

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ノハナショウブ

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一輪だけ咲いていたキキョウ

中国山地幻視行~岩陰の花・大峰山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~岩陰の花・大峰山

 

 最後の急登にかかって階段状の山道に足を踏み出したとき、頭上の木々がざわっと鳴った。かすかな風である。やれやれ、ありがたいと思った。

 7月3日。「きょうは今年最高の暑さになるでしょう」という天気予報を聞きながら大峰山(1040㍍)に向かった。平地は既に30度を超しているだろう。ここは標高があるうえ木陰なので2627度ぐらいだ。それでも暑くはある。涼しくはない。風が救いである。

 山頂は誰もいなかった。この暑さを予感して避けたのだろうか。条件さえ良ければ広島湾、山口、島根の山々まで望めるのだが、この日は霞がかかって見晴るかすことはできなかった。その代わり、山の木々は鮮烈といっていい緑だった。

 山頂の岩陰、細い隙間に黄色の小さな花があった。キリンソウであろうか。手を伸ばしたが届かず、望遠レンズでやっとカメラに収めた。ほかに花はなかった。登山口でアジサイが目についた程度であった。

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頭上の木々が風で揺れた

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急登の階段が続く

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ストックの先は山口方面

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鮮やかな緑

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西大峰方面を望む

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岩陰の花。キリンソウであろうか

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登山口近くのアジサイ


中国山地幻視行~比婆連山・ササユリとイワカガミ [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~比婆連山・ササユリとイワカガミ

 

 先日、地図を見る機会があり、比婆連山あたりをじっくり眺めた。比婆山の向かいにある吾妻山、それに連なる烏帽子山、毛無山は広島、島根県境にある。というより、山々が古代から国境(くにざかい)を形成してきたといったほうが正確かもしれない。これらを越えると奥出雲町に入る。日本海側から見ての「奥」であるから、広島側から見れば出雲の入り口にあたる。

 毛無山と烏帽子山の鞍部に出雲峠がある。気にかけていなかったが出雲峠とは、ここを越えれば出雲に入るという古人の思いが込められていたのではないか。地図を見て思った。

 6月18日、出雲峠から烏帽子山に入り、比婆山を越えて池の段へ向かった。昨年秋以来である。その前は6月。思いもかけず多くのササユリの咲き誇る姿を見た。今年も見られるのでは、と思いつつ向かった。

 その場所は池の段からの長い下りの途中にある。昨年のような光景はなく、わずかに一輪が楚とした姿を見せたのみだった。昨年は6月末だった。少し早かったのだろうか。その代わり予想しなかったものが見られた。イワカガミである。比婆連山を縦走する中で、複数の個所で淡いピンクの花弁を目にした。といっても今の時期である。くたびれた表情は隠しようもなかった。

 古事記にも登場する神話の地、比婆山には古いイチイの木がある。比婆御陵の入り口に立ち門栂と呼ばれるが、近年衰退が激しい。目にした姿は、下半分が枯れ果て余命いくばくもないと思えた。この古木もいつか倒れる日が来るのだろうか。

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「出雲峠」への標識

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比婆山山頂に「比婆御陵」がある

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枯れ行くイチイの古木

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池の段まで来ると明るい稜線が開ける

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イワカガミ

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ササユリ。崖の方を向いていたので正面から撮れなかった

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アカモノ

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ミツバオウレン? 自信はない

中国山地幻視行~三倉岳・梅雨入り宣言はしたが [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~三倉岳・梅雨入り宣言はしたが

 

 梅雨入り宣言はしたものの、晴れの日が続く。そこで、三倉岳へと向かった。気温は25度を少し上回る程度。湿度が低いせいか、日陰に入ると涼しい風が吹く。山歩きには絶好の気候と見た。

 とはいえ、石段状の登山道に入ると汗が噴き出す。4合目を過ぎたあたり、頭上から声がした。ロッククライミングに興じる人たちである。あいさつを交わし、なお急斜面を登る。何人かが楽しむ壁には、遅咲きのヤマツツジが張り付いている。

 中岳の頂上には誰もいなかった。周囲の山をしばらく眺める。幸い、霞もかかっていない。大峰山と吉和冠がよく見える。いつも思うのだが、この二つは非対称の山容が実によく似ている。

 中岳から西岳(下の岳)へと向かい、溝状の鎖場に取り付いた。このところ雨が降っていないせいで、鎖も濡れておらず快適。ほどなく西岳。ふもとの集落が見下ろせる岩場で、昼食とする。6月、田植え間近の田には水が張られていた。セルフタイマーをセットして、岩場の先まで行ってみた。カメラの位置が遠かったため、岩場の先に立つには走る必要があったが、うっかり転ぶと両側はさえぎるものがない。つくづく、わが度胸のなさを恨んだ。

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壁に張り付いて咲くヤマツツジ

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大峰山

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吉和冠

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空には飛行機雲らしき二筋

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水田には水が張られ、田植えを待つ

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転ばないかとおっかなびっくり



中国山地幻視行~白木山から宮島が見える [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~白木山から宮島が見えた

 

 小さな鳥居がある山頂は気持ちのいい草原である。階段状の道を我慢してやっとたどり着いた。雲はあるが、空は晴れている。開放感のある頂である。

 白木山は201511月以来。1年半以上も遠ざかっていた。理由は簡単だ。しんどいから。登山口から山頂まで標高差が800㍍近くある。山自体は889㍍だから、ほとんど登らなければならず、その間ほとんど展望はきかない。ひたすら林間の道を下を向いて登る。しかし6月2日、一念発起、久しぶりに登った。最近にしては気温が低く(25度ぐらいだったか)、風があったのが幸いした。

 山頂近くでチェーンソーの音がした。周りを伐採しているようだ。見回すと、何かが変わっていた。南西方向、広島湾に浮かぶ宮島(厳島)が見えた。これまでは大きなアンテナ塔と松林が邪魔をして広島湾方面はほとんど眺望がきかなかった。木を伐採したおかげで、ほぼ360度の展望が得られるようになった。

 しかし、これを登山者に対する地元のサービスと受け取るのは早合点、勘違いというものだろう。この山も周囲の山と同じく松枯れに悩まされている。そのための苦渋の対策とみるのが妥当だろう。それにしても、以前より見晴らしがよくなったことは、素朴に喜びたい。

 ちなみにいえば、この山から南には、条件が良ければ石鎚山が見えるという。北東には大山が。しかし、いまだに二つとも見えた経験がない。今度はもっと条件の良いときに来てみよう。

 

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山頂はこんな風景だ

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中央やや左の島が宮島。手前に伐採した跡が見える

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北西の深入山方面を見る

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南には石鎚山が望めるという。まだ見えたことはない

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道脇に立つお地蔵さん。どれもいい表情をしている

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中国山地幻視行~快晴の山頂・恐羅漢山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~快晴の山頂・恐羅漢山

 

 5月14日、恐羅漢山(1346㍍)。駐車場に10台はいただろう。この山では滅多に見ない光景である。さすがにこの季節、気候がいいと人が集まる。カラフルなウェアに身を包んだ若い人が多い。身支度がすみ次第、登山道に向かった。

 新緑がまぶしい山頂には誰もいなかった。駐車場で見た人たちはどこへ行ったのだろう。ほとんどは夏焼峠経由で登ってくると思われる。こちらはいつも、スキー場のゲレンデ横を直登する。時間を短縮できるが、その分面白くはない。特にこの新緑の季節、もったいないと思っても不思議はない。おそらく、その時間差のせいであろう。

 快晴の山頂の大岩から北東を眺めると、深入山の北側に臥龍山が望める。周囲には標高1000㍍ぐらいのなだらかな山容が連なる。典型的な西中国山地の景色だ。昼飯にかかる。そのころになると、三々五々人が集まり始めた。山頂の標識の周囲には10人ぐらいが陣取った。その標識、じっと見ていると、側面にメジャーがはってある。最近はられたものか、昔からあるものかは分からない。積雪量を測るためらしい。最高で2㍍60㌢まで目盛りが刻んであった。

 下山は夏焼峠を回った。登山の列がまだまだ続いた。

 この山はちょうど1か月半ぶりである。その間に、山は冬から夏に、一足飛びに表情を変えていた。


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正面左が臥龍山、右が深入山。西中国山地の典型的な景色である

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ムシカリ(オオカメノキ)。この季節、最も目立つ花である

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ショウジョウバカマ。季節も過ぎ、疲れた表情である

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山頂の標識。付近には誰もいなかった

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横にはメジャーがはってある

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昼飯を食っていると、人が集まり始めた

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新緑のトンネル。小さな看板には「滑走禁止」と書いてある。
つまり、看板より向こうがスキー場、手前が登山道である

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夏焼峠への道

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夏焼峠から右へ、ゆるゆると牛小屋高原に向かう

中国山地幻視行~山は表情を変えていた・吉和冠 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~山は表情を変えていた・吉和冠

 

 山はすっかり表情を変えていた。

 そういえば、季節はもう初夏である。新緑が色濃く、山には生気がみなぎっている。路傍には名も知らぬ小さな花が咲き競う。ついこの間までの雪に覆われた山ではない。

 5月8日、吉和冠(1339㍍)。ほぼ快晴。気温をチェックすると27度。沢の水音が心地よい季節である。

 山頂近く、ひそかな楽しみのポイントがある。イワカガミの小さな群生。みると、小さなつぼみがまだ固く、じっと時を待っていた。

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登山道の入り口。鉄の橋を渡るとき、足音が沢に響く

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新緑と青空。いい季節だ

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見渡す限りの新緑

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山頂付近

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イワカガミのつぼみ

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イカリソウ

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スミレ

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オオカメノキ

中国山地幻視行~大山とカタクリ・船通山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~大山とカタクリ・船通山

 

 「富士には月見草がよく似合う」とは太宰治の「富嶽百景」で、月見草という小さな存在が富士山と相対して引き下がらぬ凛とした姿への共感をうたった。富士は「日本一の山」といわれるが、さしずめ中国地方一の山は大山であろう。深田久弥の「日本百名山」にも、中国地方からは大山だけが選ばれている。この大山に相対し、一歩も引かぬ存在としてカタクリの花を上げるのは、無謀なことだろうか。

 5月2日、広島市内から中国自動車道経由で船通山に向かった。島根・鳥取県境にあり、広島県境にも近い。広島県北の庄原ICから山間を縫い、鳥取県の日南町に入ったところで島根県の横田方面に向かう県道15号を走る。しばらく行くと右手に林道があり、「船通山」の標識がある。まぶしい新緑の中に登山道がある。

 駐車場には既に何台かいたが、満車ではなかった。端っこに車を置き、支度にかかる。登山道を10分ほど登ると、「健脚向き」と「一般向き」に分かれる。一般向きを選ぶ。距離はやや長いが、道は整備され歩きやすい。

 山頂が近くなったころ、数人の登山者が下りてきた。「カタクリは咲いてますか」と声をかけた。「咲いてますよ」と返事があった。

 「満開ですか」

 「ええ…、でも今年は少ないみたい、とほかの人が言ってました」

 この山の頂上付近は広い草原状で、あたり一面にカタクリが咲く。この花はひっそりと咲く印象があるが、この季節の船通山の景色は、ほかの山のカタクリのそれとは全く違っている。しかし、今年の船通山は「あたり一面」というには、確かにまばらな印象があった。

 それでもマクロレンズを、花弁に向ける。寂地山と比べて、船通山のカタクリは紫が濃い。日の当たりかたが違うためだろうか。

 一息ついて、周りの山を眺めた。薄い雲があるものの、快晴である。東に目をやると、ひときわ存在感のある山容があった。大山である。頂上から麓にかけ、残雪が筋状に伸びる。船通山の北東、直線距離にして47㌔向こうにある。左には日本海の海岸線があった。この山には、濃い紫の花弁を持つカタクリの花がよく似合う。

 

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カタクリの花Ⅰ

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カタクリの花Ⅱ

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カタクリの花Ⅲ

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カタクリの花Ⅳ

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カタクリの花Ⅴ

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大山遠望

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神話にまつわる剣の碑と大山

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イカリソウ

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ネコノメソウ

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山里の道路脇には八重桜

 


中国山地幻視行~カタクリの花・寂地山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~カタクリの花・寂地山

 

 毎年、山口県の最高峰・寂地山(1337㍍)のカタクリの花を見に行く。タイミングは5月の連休のころと決めていた。春の訪れの早いか遅いかによって、開花時期に若干のずれがある。昨年は4月30日に登ったが、季節は終わりかけであった。今年は4月24日に向かった。春が来るのが遅めで、桜をはじめ開花が遅れていたので、カタクリはやや早いかとの思いがあった。そのため重い一眼レフを持って行くのがおっくうで、小型カメラ携行になってしまった。

 寂地峡から犬戻しの滝を経て本格的な登山道に取り付く。山道は気温20度を少し下回るぐらい、ひんやりした風が林間を抜けて歩きやすい。空は完璧な青であった。

 あえぎあえぎ登って山頂手前、右谷山への縦走路が左に分岐するあたりが、この山のカタクリの群生地である。見当たらないな、と思っていたら、右谷への縦走路に少し足を踏み入れたあたり、数は少ないが薄紫の小さな花が散見された。一眼レフを持ってこなかったことへの後悔が頭をよぎった。引き返して寂地の山頂に向かうと、頂上の少し手前にも小さな群生があった。しかし、それがすべてだった。やはり、時期としては少し早かったらしい。

 山蔭には残雪が例年より多く、新緑もまだのようだ。どうやら、この山も春の訪れは少し遅れているようだ。


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斜面には残雪

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新緑の季節には少し早い





中国山地幻視行~山は霞のかなた・三倉岳 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~山は霞のかなた・三倉岳

 食後のコーヒーと板チョコをザックから取り出す。「しまった」と内心思う。板チョコはドロドロに溶けていた。気温をチェックすると、20度を少し超したあたり。つい先日まで雪だのなんだのといっていたのに。もう携帯用のクーラーボックスが必要な季節が来たようだ。
 4月19日。登山口では満開のヤマツツジが出迎えた。ほどなく長い石段に取り付く。汗が額を流れる。幸い、風が少しある。頭上で梢が鳴る。風がわたる音に交じって、かすかな人の声がする。どこかの岩壁を登っているらしい。稜線に出たあたり、いくつかのザックが置いてあった。カラビナ、ハーケン、ザイルが取り付けてあった。
 中岳を越えて西岳へ。いつもの岩の上で昼飯にする。そして、冒頭のシーンである。春を通り越して山は初夏に入ったようだ。周囲の山は霞のかなたにあった。

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満開のヤマツツジ

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この石段を何度登ったか

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岩の芸術。中岳から東岳付近を望む

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西岳から、ふもとの栗谷集落を望む

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西方の羅漢山

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東方の大野権現山

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北東の大峰山

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快晴の三倉岳


中国山地幻視行~・思わぬ雪・恐羅漢山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~・思わぬ雪・恐羅漢山 

 もうすぐ樹林帯を抜けるはずだ。そう思って足元を見ると、カンジキがあらぬ方向を向いている。ベルトが外れたか。雪面に座り込んでカンジキを外す。「!」。ベルトは、外れたのではなく切れていた。
 3月30日、広島・島根県境に位置する恐羅漢山(1346㍍)。スキー場はとっくに営業をやめている。しかし、例年になく雪は多かった。ゲレンデの下部でカンジキをつけ、登り始めた。ゲレンデ最上部へ近づいたころ、人の声がした。3人のスキーヤーが顔を出した。リフトは止まっているが雪はたっぷりある。
 ゲレンデから樹林帯へ入るあたりにロープが張ってあり、「滑走禁止」の看板が下げてあった。登りの足跡はここでUターンしていた。3人はここからスキーを履き、降りたのだろう。ロープから上は、足跡のない雪面だった。踏み入れると、ひざ上まで埋まった。もう3月末である。いつ降った雪であろうか。そういえばここ数日、平野部では雨の日が続いた。そのころ降った雪であろうか。
 ルートを探るのに難儀した。そして深く柔らかい雪である。登りの時間はいつもの倍近くかかったように思う。それでも、見当では9合目近くまで登ったころ、冒頭のカンジキの異変である。どうしようか…。この雪の深さ。片足だけのカンジキで登り切る自信はない。しかし、あと少し。周りの樹林帯には見覚えがある。夏なら頂上まで30分もかからない位置にいると推測された。しかし、今は雪山である。ここまで、2時間以上かかってしまっている。頂上まで、あと1時間はかかるだろう…。しばらく葛藤した末、引き返すことにした。
 下山は自らの踏み跡を忠実にたどった。それでも片足のカンジキでは困難で、ゲレンデまでたどりつくと人心地ついた気がした。

※この山の近辺に住む知人のブログによると、3月27日夜、30~40㌢の雪が降ったという。どうやらこの雪らしい。

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リフトが止まったスキー場に3人のスキーヤーが現れた

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ゲレンデ最上部

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もうすぐ樹林帯を抜けるはずだ

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急斜面が続く

中国山地幻視行~残雪の羅漢山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~残雪の羅漢山 

 羅漢とは阿羅漢の略で、修行僧を指す。ものの本によると、羅漢山という山には奇岩が並び立ち、遠望するとそれらが修行僧のように見えてこの名がついたとされる。しかし、我々からするとこの山に奇岩のイメージはなく、お椀を逆さにしたような半円形の整然とした山容のイメージが強い。いま「羅漢山」と聞いて、修行僧のイメージを思い起こす人は少ないのではないか。なお、この山の北方には恐羅漢山という広島県の最高峰があるが、この山名の由来も羅漢=修行僧から来ている。
 3月22日、広島・山口県境の羅漢山(1109㍍)に登った。春分を過ぎてなお、残雪を求めての山行である。しかし、期待を裏切って残雪は山頂付近に名残をとどめるのみであった。むしろ羅漢の北、西中国山地の高峰が居並ぶあたりに白い峰々がきらめいていた。
 羅漢の山麓、標高1000㍍付近には牧場やキャンプ場、スキー場が整えられている。そのうちの、キャンプ場近くの駐車場に車を入れた。シーズンではないので貸し切り状態であった。頂上まで標高差150㍍ほどである。ゆっくり行って1時間ほどと見通しを立て、歩き始めた。
 ところが、標識を確かめて山道に踏み込んだにもかかわらず、針葉樹の植林帯の中で迷ってしまった。途中で道が消えたのである。ササや雑草を踏み分け、見当をつけて歩くうち、なんとか道らしきものを見つけられたからよかったが、もし見つからなかったら…と一瞬だが冷や汗ものだった。
 ルートを見つけてしまえば、後は登るばかりである。しばらくして「小羅漢まで0.2㌔」と表示した標識を見つけた。寄ってみると立派な展望台がしつらえてあった。上ると正面に吉和冠から寂地、右谷山へと続く稜線が広がった。
 この山の頂には、不思議なものが二つある。一つは、雨量を測定するためのレーダー塔で、建てたのは国土交通省。レーダーによって半径300㌔の範囲の降雨状況を測定するという。気象衛星の精度が格段に上がった現在、こうしたものが必要なのかは、素人には分からない。もう一つは、「磁石岩」。2億数千年前から8千年前にかけて地殻変動や岩石変成作用によってできた橄欖(かんらん)岩が強い磁力を持つに至ったとされる。なぜそうなったかは、これも素人なので分からない。とりあえずコンパスを近づけたところ、針が一回りしたので、名前に偽りなしと確認した。
 山頂からは、小羅漢と同様に寂地、吉和冠、十方山がよく見えた。ところが、自宅で地図を見ながら確認したところ、羅漢から見て恐羅漢は十方のほぼ真裏に位置することが分かった。では、十方山の西に見える雪山は…。自信はないが、島根県の広見山ではないかとの結論に至った。


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頂上直下の山道

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頂上展望台横にわずかな残雪

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羅漢山頂の標識

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磁石岩。コンパスを近づけると針が揺れる

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雨量計測用のレーダー塔

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中央が十方山。その左(西)は広見山か

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右のとがった頂が吉和冠。左へ寂地山への稜線が延びる


中国山地幻視行~春うらら・大峰山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~春うらら・大峰山

  「うらら」は「麗」と書く。手元の辞書によれば、空が晴れて、太陽が明るく照っているようす。春の日をいう場合が多い―とある。3月19日、3連休の真ん中のこの日は、この言葉通りの一日だった。
 午前9時ごろ、広島市の近郊、大峰山(1050㍍)のふもとの駐車場に車を入れた。かつては分校のグラウンドであったが廃校となり長く放置されて雑木に覆われた。地元の人たちが整備して、立派な駐車場となった。
 男女一組の先客がいた。身支度を整えていると、続々と人が来る。まず女性のグループ。笑顔であいさつを交わす。続いてマイクロバス。降りてきたのは10人ほど。こちらは一人なので準備が整い次第、出発した。まず、別荘地帯の舗装された急坂を登る。いつもながら、楽しい道ではない。味気ない上に、結構な急斜面だからだ。息が切れてきたころ、カメラの携行を忘れたことに気づき、引き返した。おかげで、先ほどのマイクロバスの一行に追い越されてしまった。
 頂上に着いたころ、団体はもういなかった。どうやら、尾根伝いに行ける西大峰へと踵を返したらしい。女性3、4人のグループは頂上の大岩に陣取っていた。ザックに下げた温度計を見ると、気温20度。大岩の上からは360度の展望が楽しめるのだが、この日は春霞のため、遠くの山々は霞んでしまっていた。いつもはよく見える広島湾も、ベールの向こうである。北へ目を転じると、辛うじて恐羅漢山のスキー場のゲレンデと、その右隣り(北東)の砥石郷山が確認できた。そこからずっと左(西)に目を転じると、吉和冠の特徴ある不等辺三角形の山容も判別できた。その左(西)は広島・山口県境の羅漢山だろう。
 山を下り、車を走らせていると道路脇に季節遅れの白梅が咲いていた。麗らかな春の日に輝いているように見えた。

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北側斜面には残雪

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西大峰への尾根

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広島湾は霞んで見えない

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恐羅漢のゲレンデが見える。その右奥は砥石郷山

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雲一つない青空

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季節遅れ、梅ほころぶ


中国山地幻視行~残雪漫歩・深入山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~残雪漫歩・深入山 

 懸案の仕事がひと段落した。窓の外はいい天気。久しぶりに出かけてみるか。しかし、このところ山はご無沙汰。間違いなく体はなまっている。どうしようか。思案をするより、出かけてみよう。
 深入山。国道からすぐ入ったあたりまで路面は雪で覆われていた。スノーシューを準備。ところが、最近はいていなかったためか、経年劣化のせいか、ゴムバンドが切れてしまった。急いで予備のカンジキに履き替える。スノーシューも、ずいぶん使ったな、そろそろ替え時か。とりあえず、カンジキをはき、急斜面を登った。
 予想に反して山はまだら模様だった。それもそうだ。もう3月も半ばに近い。それでも気を取り直し、雪のあるところを登る。雪質は硬い。急斜面なのでアイゼンの方がよかったか。途中で替えてみた。こちらの方が食い込みがいいようだ。
 しかし。雪は上に行くほど少なくなり、もうすぐ途切れそうだ。そこで、なぜか気が変わり、あちこち雪上を渡り歩くことにした。頂上を目指すだけが山登りでもないだろう。そんな気分で残雪漫歩の一日に。たまには、こんなのもありかな。


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あれ、雪がない

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スキー場のゲレンデがあるのは、広島県の最高峰・恐羅漢山

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この先は雪がなさそう…

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近くの丘には、何かのシュプールが一本


中国山地幻視行~思わぬ雪と氷・三倉岳(2月13日) [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~思わぬ雪と氷・三倉岳(2月13日)

 9合目を過ぎて、中岳に向かう。途端に雪が多くなる。この辺りは鞍部で風が通りやすい。山間部に雪を降らせた風が、ここまでくるのだろう。比較的乾いた雪で、足元でキュッと鳴る。靴底の溝に詰まって、滑る感覚がある。アイゼンを持ってくればよかった、と思うがもう遅い。そのうち、狭い溝状の山道になる。
 なんとか登り切って、中岳から夕陽岳への長い溝状のルートに向かう。ここは一日中日当たりが悪い。雪があると苦労するなあ、と思っていたが、思いのほか雪はなかった。しかし、つかもうとした木の根っこはいずれも太いツララが下がっていた。
 手袋を雪山用に変えて、登る。足元の岩はうっすら氷が張り、よく滑る。バランスを取りながら注意深く体をずりあげていく。ここには長い鉄の鎖が張ってあるが、凍り付いてほとんど役に立たない。
 なんとか登り切って息を整える。やや雪が深くなった道を行く。頂上からは羅漢山がよく見えた。広島、山口県境に近いあたり、レーダー塔の立つ半円形の山容は白く雪をかぶっていた。

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予想しなかった雪が現れた

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行く手には巨大なツララ。左手に鎖が見えるが、凍り付いて役に立たない


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こんなのを見るとホッとする


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広島・山口県境にある羅漢山。雪をかぶっている

中国山地幻視行~快晴の宮島・弥山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~快晴の宮島・弥山

  いつのころからか、初登山は宮島・弥山と決めている。1月6日、その弥山に登った。例年のことだが、年々急坂が身にこたえるようになった。いつの間にか大聖院からではなく、もみじ谷からの登山道に取り付くようになった。コース全体としてはそれほど差はないのだが、取り付き部分が、もみじ谷の方が緩い。知らず知らず、なるべく緩くて楽な方を、という選択をし始めているわが身が情けなくもある。
 ということで、新年早々にしては勢いに欠ける書き出しになってしまったが、年を考えればやむを得ないところか。しかし、空はあくまで青く、海はあくまで平穏で碧かった。この空と海の色の記憶を、今年1年のエネルギーにしよう。

  みなさん新年おめでとうございます。今年もお付き合いよろしくお願いします。


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厳島神社の大舞台

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弥山の山頂から。右端は展望台の屋根部分

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駒ヶ林。毛利と陶の戦いで、陶の軍勢100騎が3日間立てこもったといわれる

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広島湾。最近は外国人観光客にこの風景が人気なのだそうだ

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消えずの霊火堂。1200年燃え続ける火があるという

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下山途中、神社と桟橋を眺める


タグ:宮島 弥山
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